森の入り口

本を読んだり映画を観たり音楽を聴いてどうにか人のかたちを保っています

感想

鳴り響く鼓動のフーガ:『真夜中のピアニスト』感想(ネタバレあり)

ジャック・オーディアール監督、『シェイプ・オブ・ウォーター』や『イミテーション・ゲーム』のアレクサンドル・デスプラが音楽を担当した(!!)『真夜中のピアニスト』(2005)を観た。このミステリアスな邦題が内包する趣に惹かれて気になっていたのだ。配信…

福永への凄まじいリスペクト:大林宣彦『廃市』(1983)

大林宣彦の映画『廃市』を観た。 ずっと、かれこれ5年近く見よう見ようと思っていたのだ。それを理由をつけては後に回しているうちに時間が経っていた。大林宣彦が如何に福永武彦を愛しているのか、氏の『草の花』への想いを伝え聞いただけでもよく分かって…

エゴと狂気の二重奏:『ファントム・スレッド』感想(ネタバレあり)

ママの思い出が鮮烈に蘇る 夢の中に現れたり香りが漂う とても強く感じるんだ 我々の近くにいて手を差し伸べている きっと今夜ドレスを見てくれたと思う 最初は怖かった。 なぜこの女はこんな手段を取るのか、ここまでしなければならないほどこの男に尊厳を…

最終講義

昨夜は寝付けなくて気がついたら朝の4時になっていて、おかげで午前中丸々寝て過ごしてしまった。眠れない時間に思索に耽ったのかというとそんなことはなく、ただただ無為に時間を溶かしてしまった。しかし、同じ2016年ドラフトの遊撃手である西武の源田選手…

『歩道橋の魔術師』(呉明益)

一年近く前に勧められてから読むタイミングを逃していたが、漸く読めた。年が明けてから映画を観るのと再読にかまけていたのでこれが今年最初に読んだ本ということになる。 呉明益の作品は先に長編の『自転車泥棒』を読んでいて、こちらのテイストが気に入っ…

2019年に観た映画振り返り(自宅編)

映画館で観た作品についてはこちら 取り零しがあるのは承知で、記憶に残った作品たちを。 1.ノッティングヒルの恋人 ロマンスっていうのはこういうのを言うんだろうなというぐらい夢のような恋の物語。『イエスタデイ』でも思ったけど、この監督の作品って30…

『イタリア広場』アントニオ・タブッキ

イタリア広場 作者:アントニオ タブッキ 出版社/メーカー: 白水社 発売日: 2009/09/01 メディア: 単行本 『イタリア広場』は1975年に書かれたタブッキの処女作だ。30歳になると必ず死ぬという数奇な宿命を背負う一族の男子たちが、イタリア統一後の王国から…

死者の声を呼び覚ます:『めぐり逢う朝』感想(ネタバレあり)

原題は"Tous les matins du monde"(『世界のすべての朝は』) コルノー監督キニャール脚本で17世紀のヴィオラ・ダ・ガンバの名手サント・コロンブと弟子のマラン・マレとの交流を描いた作品。今年はガンバ奏者Hille PerlのCDをよく聴いていたのもあって気にな…

私はいつから夢を見ていたのか:『寝ても覚めても』感想

赤の他人どころか画面の向こうのフィクションの世界の人物なのに、観終わってから一ヶ月経ってもなお彼らのことを考えている。 今年の春先に質問箱を介して『寝ても覚めても』を強くお勧めしてもらっていたが、当時は余裕がなくてあまり観る気になれず、漸く…

2019年に観た映画振り返り(劇場編)

年の瀬恒例の #2019年に観た映画ベスト10 なるハッシュタグをやろうとしたものの選びきれなくて初っぱなから躓いてしまった。 というやる気のない理由から、徒然に今年観た映画を振り返ることでお茶を濁そうと思う。案外長くなってしまったのでまずは劇場で…

『自転車泥棒』(呉明益) -あるいは遠回りする形見

その本は、年々縮小していく家から一番近い本屋の、海外文学のごく小さな棚の片隅に佇んでいた。 おそらく刊行された昨年の秋に新刊として仕入れたものがそのまま中国文学のコーナーに移されたのだろう。周りの本と比べ幾分か厚かった。 基本的にアジア文学…